北欧神話の「ユグドラシル」の意味と由来とは
北欧の神話には、「ユグドラシル」という言葉が登場します。
ユグドラシルとは、北欧神話の宇宙観のなかに現れる一本の樹を意味し、日本語では「世界樹」や「宇宙樹」と翻訳されます。
まず、北欧神話では世界の起源として最初に混沌があります。その混沌から世界をつくったのが巨人たちで、その後、巨人を滅ぼす神々が現れます。
神々の主は、オーディンと言い、ゲルマン神話ではヴォーダンとも言われます。オーディンは、水曜日(ウェンズデイ)の由来にもなっています。
神々の王オーディンは、ユミルという巨人の身体から天と地をつくり、アスクとエンブラ(アダムとイヴ)という最初の人間をつくります。
天と地のあいだには、ビフレスト(蛇)という橋が掛けられます。
北欧神話の神々は、アース神族とヴァン神族の二つに分けられ、オーディンはアース神族に属します。アース神族は最高神オーディンを中心とした一族で、ヴァン神族は豊穣や富の神々。両者の違いは、日本の天津神と国津神の区分と似ていると言われています。
また北欧神話の宇宙では、世界は9つの層から成り立っているとされています。
アース神族の国 | アスガルズ |
ヴァン神族の国 | ヴァナヘイム |
妖精の国 | アルフヘイム |
こびとの国 | スヴァルトアルフヘイム |
人間の国 | ミズガルズ |
巨人の国 | ヨツンハイム |
火の巨人スルトの国 | スペルヘイム |
死者の国 | ヘル |
雪と氷の極北の世界 | ニブルヘイム |
そして、この9つの世界を貫く一本の巨大なトネリコの樹が「ユグドラシル」です。言うなれば、世界の土台となっている大樹です。
ユグドラシル(Yggdrasill)の語源は「Ygg’s horse(恐るべき者の馬)」で、Yggは神々の王オーディンの異名の一つであることから、「オーディンの馬」を指すとされるのが有力な説です。
北欧神話の世界樹(ユグドラシル)/ スノッリのエッダの英訳本挿絵(1847年)
ちなみに、名称に「ガルズ」や「ヘイム」という言葉がつきますが、「ガルズ」とは、「囲われた土地」を意味し、占有者が決まっている場所のことを言い、今のドイツ語では、Garten(ガルテン)、すなわち「庭」のことを指します。
一方の「ヘイム」は、もともと「生まれ育った土地」を意味し、今のドイツ語で言うHeim(ハイム)で、「わが家、家庭、故郷」のことです(「セキスイハイム」など日本語の社名やマンション名などにも使用されます)。