なぜ「ハンマースホイ」から「ハマスホイ」に
ヴィルヘルム・ハンマースホイの展覧会が2020年に開かれることに。
前回の展示会でハンマースホイの作品を好きになったひとにとって、まず最初に違和感を覚えたのは名前の表記ではないでしょうか。
ハンマースホイではなく、ハマスホイ、という風に2020年の展示会では表記が変わっています。
なぜ表記が変わったかと言うと、「ハマスホイ」がデンマーク語でより正確な読み方であること、また前回の「ハンマースホイ展」と監修者が違うことなどが理由にあるようです(前回の監修者である研究者の佐藤直樹さん監修の最近出版された画集も「ハマスホイ」表記なので、今は統一の見解になっているのかもしれません)。
「ハマスホイ」で検索したら、「前はハンマースホイだったのになぜ変わった」という不平が延々と流れてくる。語学的見識の確かな学芸員が、2008年展覧会ですでに「ハマスホイ」表記を提唱したにも拘らず却けられたのですよ。で、負の遺産として今も世を漂っているのが、みなさんの当惑気味の呟きです。
— 奥山裕介 OKUYAMA Yusuke (@trods_klods) January 25, 2020
芸術紹介を盛り上げる上でこの上ない味方である既存の愛好者が、その固陋ゆえいちばんの足枷になりうるという見本だな。一方で、北欧ファンに阿った「ヒュゲ」推しありきの偏向キャンペーンも、後世にいかなる誤解を持ち越すかしれたものではない。
— 奥山裕介 OKUYAMA Yusuke (@trods_klods) January 25, 2020
語学的見識のある学芸員がハマスホイを提唱したものの、前回の展覧会ではハンマースホイになった、ということは、当初から意見の相違があったということなのでしょう。
ちょっとややこしいですが、表記の変動は海外作家には付き物なので仕方がないことなのかもしれません。
たとえば後期印象派の画家ゴッホ(Gogh)のことも芥川龍之介は「ゴオグ」と書いていましたし、高階秀爾さんの『近代絵画史』では、「フィンセント・ファン・ホッホ」という表記もあります。
また、「ゴーギャン」も「ゴーガン」と綴られることがあります。
ただ、Wikipediaはもちろんのこと、以前のハンマースホイ展の際の新聞記事やテレビの特集でも「ハンマースホイ」という呼び名が使われているので、果たしてこれから「ハマスホイ」のほうが定着するのかはわかりません。
>>誰もいない部屋こそ美しい 北欧の画家・ハンマースホイ|NHK 日曜美術館
ちなみに、デンマークの首都コペンハーゲンにあるコペンハーゲン国立美術館のYouTubeチャンネルに、ハンマースホイ(ハマスホイ)が一時住んでいた旧家にまつわる動画があります。
この映像に登場する二人の話している言語が(おそらく)デンマーク語であり、ネイティブの「Hammershøi」の発音なのでしょう。
ハンマースホイ? ハマスホイ? どちらに聴こえるでしょうか。
ツイッター上の反応
ツイッター上では、このハンマースホイとハマスホイの表記について様々な意見があったので一部引用したいと思います。
2008年の展覧会(この時は知らなくて行ってなかった)以来、
西美所蔵のイーダの絵の作者はハンマースホイ。
ハマスホイの方がデンマーク語の発音に近いそうだけど
今回の展覧会のあと西美の表記はどっちになるんだろう— ぜんまい (@higezenmai21) 2020年1月26日
「ハンマースホイ」が「ハマスホイ」に変わった事にとまどいはありますが、「じゃんけんぽん」が京都では「いんじゃんでほい」だと知った時ほどではありません。「ハマスホイとデンマーク絵画」展はきょうから上野で。きのう内覧会に伺いましたが発見の多い展覧会でした。ほい。
— 平田俊子☆『低反発枕草子』 (@hiratatoshiko) 2020年1月21日
ハマスホイとデンマーク絵画(東京都美術館、〜3.26)。なぜハンマースホイを止めてハマスホイにしたのかしら。いろいろ複雑な事情があるのかしら。
なお、私、2008年の展覧会は見てない。図書館に本を返しに行ったときに前回展図録を借りてこればよかった。
←2008 チラシ 2020→ pic.twitter.com/orqN9iD4HF— passerby (@tokyopasserby) 2020年1月24日
ハマスホイよりハンマースホイのほうがハンマースホイにはお似合いだな。ハメルショイって呼び名を見た時はもうよくわからなかったです。名前が変わろうとも貴方の高貴さは同じ。
— yas (@ohchi_yasuhito) 2020年1月25日
『ハマスホイとデンマーク絵画』展、週末行けるかな。どうでもよいが、長らくハンマースホイ表記が一般的だったのにハマスホイに変えたのが地味に気になる。発音に忠実にしたのであれば、名のヴィルヘルムもヴィルヒムとかにしないと姓とバランスとれなくない?
— みつわ (@screw_tape) 2020年1月24日
古い英文学書でワーズワースが「ワズワス」になっているのを見るといちいちクスリとするんですが、なんでハンマースホイは「ハマスホイ」になっちゃったんでしょうね
— けれども (@keredomo_) 2020年1月21日
しかし不勉強ながら、いつの間に「ハマスホイ」になったのでしょうか…。デンマーク語だと、確かにハンマースホイとハマスホイの中間くらいではある気がしますが。
— JUN (@elskerkaffeK) 2020年1月21日
ハマスホイはいつからハマスホイになったのか?前観に行った時はハンマースホイだった。調べたら12年前だ。たった12年で表記が変わるとは。ハマスホイだと何だか和風だなぁ。自分はハンマースホイでいいや。
— でおひでお (@jikuuhideo) 2020年1月20日