北欧デンマークの画家
この記事では、デンマーク出身の画家ヴィルヘルム・ハンマースホイ(ハマスホイ)以外に代表的なデンマークの画家を紹介したいと思います(随時更新)。
まず、デンマーク芸術で有名なのは、デンマークの芸術家村スケーエンを拠点とした「スケーエン派」の画家たちです。
スケーエンは、北海とバルト海に挟まれ、光と自然に恵まれたデンマークの最北端の町。
この町に、19世紀後半から20世紀初頭、北欧の画家や詩人、作曲家たちが集まり、「芸術家村」をつくります。絵画のモチーフは、漁師たちの働く姿や村人の生活、自然の風景など、日々の暮らしに根ざしたものでした。
アンナ・アンカー(1859 – 1935)
アンナ・アンカーは、夫ミカエル・アンカーとともにスケーエン派として活躍したデンマークの女性画家です。
この町を求めて集まってきた「スケーエン派」の画家たちのなかで、アンナ・アンカーは唯一生まれも育ちもスケーエンでした。
同じくスケーエン派の代表画家ペーダー・セヴェリン・クロイヤーが描いたアンカー夫妻の肖像画は、以前デンマークの1000クローネ紙幣の肖像画に採用されています。
アンナ・アンカー「漁師の娘」 1890年
アンナ・アンカー「夜の祈り」 1888年
ミカエル・アンカー(1849 – 1927)
アンナの夫であるミカエル・アンカーは、1849年、バルト海のデンマーク領の島ボーンホルム島で生まれ、勉学に励むも貧しさのため16歳で働き始めます。
その後、デンマークの印象派画家たちとの出会いから、芸術の世界を目指し、美術学校で学んだのち、スケーエンに移住し、アンナ・アンカーと結婚。古典的な画風から自然主義的な画風に変わり、二人の暮らした家とアトリエは歴史的な建造物となっています。
ミカエル・アンカー「奴は岬を回れるだろうか?」 1880年頃
ミカエル・アンカー「海辺の散歩」 1896年
マリー・クロイヤー(1867 – 1940)
マリー・クロイヤーはスケーエン派の画家。スケーエン派でもっとも代表的な画家であるペーダー・セヴェリン・クロイヤーの配偶者です。
夫クロイヤーはやがて精神を患い、のちに二人は離婚。夫はこの世を去ります。
その後、マリーはスケーエンの町を出ると、家具やインテリアデザインの世界で活躍します。
マリー・クロイヤー「静物画」 1900年
マリー・クロイヤー「縫い物をする女性のいる室内」 制作年不詳
ペーダー・セヴェリン・クロイヤー(1851年 – 1909年)
ペーター・セヴェリン・クロイヤーは、スケーエン派でもっとも有名な画家。現在のノルウェーで生まれ、デンマークのコペンハーゲンで育ちます。
幼少期から才能を発揮し、14歳からデンマーク王立芸術アカデミーで学びます。その後、画壇デビュー。欧州を旅行し、印象派のモネの影響も受けます。
その後スケーエンに移り、マリーと結婚。妻の肖像や、その町の自然、生活する人々を生き生きと描きました。
ちなみに、クロイヤーはヴィルヘルム・ハンマースホイの師でもあります。
ペーダー・セヴェリン・クロイヤー「Roses」 1893年
ペーダー・セヴェリン・クロイヤー「Hip, Hip, Hurrah!」 1888年
ピーダ・イルステズ(1861 – 1933)
ピータ・イルステズ「自画像」 1898年
スケーエン派以外のデンマーク芸術では、ヴィルヘルム・ハンマースホイの義兄(妻イーダの兄)でもあるピーダ・イルステズが有名です。
ハンマースホイと同様、仄暗く、静かな室内画を残しています。
一見して分かるようにハンマースホイの影響を強く受けつつも、ハンマースホイにはない柔らかな光が温もりを表現します。
ピーダ・イルステズ「読書する女性」 1907年
カール・ホルスーウ(1863 – 1935)
カール・ホルスーウ「自画像」 1920年
同じくハンマースホイと交友のあったデンマークの画家カール・ホルスーウ。
室内画という共通点はあるものの、どちらかと言うとホルスーウのほうがフェルメールを連想させる生活感と光に照らされています。
カール・ホルスーウ「室内にあるチェロ」
カール・ホルスーウ「窓辺の母と子」